ランカスター陛下の放浪日記?

 そうして、私とアヤは夕方にはクローディアについた。 途中、道を早める為に転移魔法を使ったことは余談だが。

そして・・・

「ランフォード様。陛下とアヤ様がお戻りになられました。」
「分かった。」

「楽しかったかな?」
「ええ。とてもありがとうございました。陛下。」
「いやいや・・・礼には及ばんよ。」

「父上!!」

 どこからともなく怒鳴り声が聞こえた。 その主はすぐ分かった。 私の事を「父上」など呼べるやつは一人しかいない。
「へ、陛下・・・ランフォード・・・・怒ってます・・・やっぱり。」
「よお、ランフォード。そんなに怒ってると「胃炎」が再発するぞ〜。」
「貴方に言われたくありません!!だいたい、誰の所為だと思っているのですか!! オレが「神経性胃炎」になったのを!!」
「あ〜・・・私だったか?スマンスマン。」
「・・・・・。」
「アヤまで巻き込んで・・・もう。 どこで誰が彼女の「命」を狙ってるか分からない状況になりつつあるのに・・。」
「何だそれは?」
「クロードの件もあるんです。 いつどこでアヤが狙われるか分からない状況なのですから、彼女を勝手に外に連れ出さないでください!」
「そんなに怒ると将来ハゲるぞ。ランフォード」
「もう!!父上!!」
「・・・なるほど・・・だから・・お前は「彼女」を外に出さなかったのだな。」
「・・・分かっていただきました?」
「ランフォード。陛下は悪くないのよ。私が城下町に出たいって陛下に頼んだから。 私が悪いの。陛下は何にも悪くないよ。」
「アヤ・・こんなやつ、庇わなくていい。」
「父親にむかって「こんなやつ」とは・・・。そういう人間に育てた覚えは無いぞ!ランフォード!!」
「今の貴方にはそれで十分です!!」

ったく・・・こいつの性格をどうにかしたいものだな。

「それから・・・父上・・・執務室でヴァリスが待っています。」
「・・・かなり怒ってるだろうな・・・。」
「ええ・・かなり怒ってます。ヴァリスの愚痴をくだくだと聞かされましたから。」
「・・・覚悟して行くよ。ではな、アヤ・・・楽しかった。」
「私もです。ありがとうございました。」

 私はそう言ってその場を去る。

「ランフォード・・・ごめんね。勝手に出て行ったりして・・・。」
「アヤが無事ならそれでいい。」
「王都の街を見たかったの・・・ランフォードに言おうと思ったんだけど・・・ 忙しそうだったし・・・ファーナもイリアも私の警護以外にも仕事あるし。 差し支えちゃ悪いなぁって思ったから言えなかったの。」
「ごめん。オレも・・・気付かなくてごめんな。一人でつまらなかったよな。 父上が案内したかもしれないけど・・・明日・・もう一度、街に出てみる?何かあればオレが守れるし。」 「うん・・でも私も守ってもらってばかりじゃ・・・私だって一応「剣」の「心得」はあるんだから。」
「クロードの件か。あれは凄かったな。」
「でしょ。・・・ねぇ・・・ランフォードもさぁ、ランフォードしか知らない場所もあるんでしょ、教えて。」
「オレだけが知っている場所・・・分かった。で、今日は父上とどこまで行ったんだ?」
「えっと・・城下町案内してもらって・・・陛下の秘密の場所・・ ランフォードのお母さんやランフォードだけが知ってる場所と・・・それからエストリア王国まで行った。」
「へぇ〜・・・エストリア王国まで行ったんだ・・・・ってエストリアだぁ?」
「う、うん・・・ついでだから・・・って。ランカスター陛下、転移魔法使ったよ。」
「ったく・・・仕方ない父上だな。」
「えへへ・・ランフォードもいっぱい色んなところ連れてってね。私、色んなモノ見たいんだ。」
「アヤが納得するまで付き合うよ。」
「ありがと。」

 そんな二人の会話を私は壁際で聞いていた。
「ま・・・なるようにしかならないか。さて・・・ヴァリスの説教でも聴きに行くか。」

 私の放浪は毎度のことながらヴァリスの説教で幕を閉じる。 やつの説教を聴きなれたせいか、別になんとも思わない。ヴァリスには悪いがね。

「もう、いい加減にしてくれよ。仕事が進まないだろぉ〜」
 と、ヴァリスは嘆いていた。 その様子がおかしくて、私はふきだしそうになる。
「なんで、笑ってんだよ!!ランカスター!!」
「ああ、すまない。」
「すまないって思っているのなら止めてくれ〜。オレとランフォード殿下の為に。」
「努力するよ。」
「努力じゃダメだ!!今すぐやめろ!!」
「人間、一度ついた癖はなかなか抜けないものだ。 今すぐやめろと言われて止められると思うのか?」
「ぐ・・・。」
 ヴァリスは何もいえなくなった。 つまり、それは「私」を止められる人間などいないという事だ。 私を止められるのはただ一人だけだ・・・。今はもういない・・・私の妃・・・。
 レディアーナ・・・彼女だけだ・・・。
"ランカスター様!!どこに行かれるのですか!! ヴァリスが探しておりましたよ。さぁ、さっさとお部屋にお戻りください。"
"レ、レディアーナ・・・。今日は・・今日だけは見逃してくれ!!"
"それを許してしまいますと、またランカスター様は「その手」をお使いになる事は分かり切っています。 はっきり申し上げます。ダメです!! さ、ヴァリスがランカスター様をお待ちですよ"
"や、やめてくれ〜"

「くす・・・。」
「何笑っている?」
「・・・いや・・レディアーナとの思い出をな・・・。」
「・・・レディアーナ様がいらっしゃったら・・・今ごろこんな事には・・・。」
「もういない人の事を考えても仕方ないさ。」
「それはそうだが・・・。」
「ま、明日は真面目に仕事するさ。」
「明日だけじゃなく、毎日そうしてほしいぞ・・・っていうかそうする事が当たり前だ!!」
「ははは。」
「笑い事じゃない!!・・・・もう・・胃がキリキリして仕方が無いよ・・・。」
「神経性胃炎か?ランフォードと一緒だな。」
「殿下とオレの「胃炎」の原因は総て、「お前」だ!!」
「そんなに怒るなって・・・だからストレスがたまるんだ。」
「それをお前が言うな!!」
「たぶん、この癖は一生治らないな・・・。」
「なんとかして、治してくれ。こっちが困る。」
「一度ついた癖はなかなか治らないもんだ・・・。」
「もう・・お前ってやつは・・・。」
 ヴァリスはため息をついたが、その事を分かりきっているのでそれ以上、何も言わなかった。

 こうして、私の放浪の1日は終わる。

FIN

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