秋風の歌

第壱幕

I will order under my name again.[我が名のもとに再び命ず。]  Open the Gate![開け魔界の門!]
 言葉を放つと同時に、魔力を込めた杖を地面に突きたてる。 その瞬間、今にも私を殺そうとしていた歩兵たちが顔を青ざめ、我先にと逃げ出す。
 そんな事にも構うこともなく、私は冷静に虚空に現れた魔法陣に注意深く魔力を注ぎ込む。

 ドアと鍵に例えられる古代の魔術。 誰にでも作れるドア。 しかし一部の、しかもごく一部の人間だけが鍵を作れる。
 その一人がたまたま私だった。 呪文が扉、魔力が鍵。 人それぞれ異なる魔力の波長。 それがドアの鍵となるのだ。

 魔法陣に過不足なく魔力が伝わりきるまでにかかる時間は無限に感じる。
 だが実際の時間はほんの一刹那。 このかかる時間で逃げた兵士立たちの生涯が決まる。
――ここで物語を終えるのはあの柱まで逃げ切れなかった兵くらいだろうか。
頭上で開かれる「魔界の門[ゲート]」。

 門と言っても実際は次元の裂け目だろうと言われている。 所詮は無理やりよびだした「門」。
 ものの数秒ほどで消滅してしまう。 しかしその威力は強大なもの。 だから、私がここに立っている。

 私はただその場に立っていた。 幾多の[抜け殻]がそこらに転がる戦場に。
 決して望んだことじゃない。 息を吐くようにごく当たり前に死を撒き散らす私を人はこう呼ぶ。
死神の長[プルートー]、と。

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