秋風の歌

第四幕

 そうしてすぐに戦いは起こった。
 和平を求める努力は最大限した。だが、返ってくる返答はすべてめちゃくちゃなものばかりだ。

 領土の併合、自治権は認めない、食糧生産のみで工業生産は認めない、等々。
 ……完全にこちらの意見を聞く気などないらしい。

 こちらの準備を待つことなく攻め立てた彼らの勢いは止める術もなくあっという間に国を侵食、王都まで迫った。そう言うことを予期出来たとは言え、こちらの兵士の練度・人数は不十分なもの。苦汁を飲まされるような思いで、儚く消えてなくなりそうな彼女を前線へと送った。
 だが戦況は彼女一人で覆されるほど甘いものではなかった。彼女がいる戦線、そこだけが良くなってもこの戦争に平和は訪れない。圧倒的な兵力を持つ敵国は完全にこの都を取り囲んでいる。

 このままではこの国が、彼女の居場所が。
 全て失われてしまう。

 いったいどうすれば。
 いったい何をすれば皆が、全てが救えるのだろう。

 ……全てを救うというのは傲慢とでも言うのだろうか。
 ならせめて彼女だけでも。
 彼女が普通に暮らせる世界。せめてそれだけでも、私は作らなければいけない。

 なら――……
 私は私が出来ることをしよう。
 たとえどんなに自分の力がないと知っていても……いや、自分がいかに無力かと知っているからこそ……だからこそ。自分が出来ることを知っている。

 一つ心を決め、歩を前へと進めた。

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